経済安保の機微情報に接触可能な官僚・研究者を一元審査する機関新設へ…AIや半導体分野想定

経済安保の機微情報に接触可能な官僚・研究者を一元審査する機関新設へ…AIや半導体分野想定

 政府が経済安全保障分野の機微情報を扱える政府職員や民間人らを認定して権限を与える「セキュリティー・クリアランス(適性評価)制度」の概要が明らかになった。人工知能(AI)や半導体に関する情報取扱者の犯罪歴などを調べるために一元的調査機関を新設することが柱だ。厳格な審査を通じて、諸外国とも重要情報を共有・交換できる態勢を整え、国際共同研究・開発への積極的な参加を目指す。

 複数の政府関係者が明らかにした。従来は同様の制度がないため、海外から情報保全に懸念が示され、日本が共同研究などに参加できないケースがあった。今後は日本が米国などと研究・開発を共同で実施し、日本企業のビジネスチャンスが拡大することが期待される。

 政府が保有する機微情報をもとに共同研究・開発を行う官僚や民間企業の研究者らが調査対象になる。具体的には、AIや半導体技術に関する情報を想定しており、サイバー攻撃の脅威や対策に関する情報も対象となる方向だ。

 一元的調査機関では、情報取扱者に関して、本人の同意を得た上で、〈1〉過去の犯罪・懲戒歴〈2〉情報の取り扱いに関する経歴〈3〉薬物の乱用歴〈4〉精神疾患の有無〈5〉飲酒の節度〈6〉借金を含む経済状況――などを調べる。その上で、機微情報を持つ各省庁が問題がないと判断すれば、情報を取り扱う権限を与える。

 調査を一元的に行うことで、民間事業者が情報のやりとりに関する契約を複数の省庁と個別に結ぶ場合でも、その都度、調査を受ける必要がなくなるという利点がある。防衛省など厳しい独自基準を持つ一部省庁については、各省庁が独自に調査する案も出ている。

 情報については、内容の重要度に応じて、2段階に区分する。情報を漏えいした場合の罰則は、最高で「懲役10年以下」とする方針だが、2段階の区分に基づき、罰則の重さに反映させる見通しだ。

 政府の有識者会議は来年1月にも、今回の制度に関する見解をまとめる。これを踏まえて、政府は関連法案を来年の通常国会に提出したい考えだ。