東芝の買収価格、「物言う株主」は前向き評価せず TOBに市場注目

東芝の買収価格、「物言う株主」は前向き評価せず TOBに市場注目

東芝の株価に投資家の注目が集まっている。同社が日本産業パートナーズ(JIP)を中心とした国内連合の買収提案を受け入れたことで株価は一時上昇。7月下旬をめどに開始を目指すTOB(株式公開買い付け)前に割安で買おうとする動きが広がった。とはいえ、「アクティビスト(物言う株主)」と呼ばれる大株主の海外投資ファンドは買収価格に前向きな評価をしていないことも判明し、その動向を懸念する向きもある。

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東芝がJIPからの買収提案を受け入ると決めたのは23日のこと。東京株式市場では翌24日の東芝株に買いが集まり、前日終値比177円高の4390円で取引を終えた。週明け27日も一時は4420円と24日終値を上回る場面があった。

JIPが提示したTOB価格は、1株当たり4620円。買収提案が受け入れられた23日の終値(4213円)より約10%上乗せした設定だ。直近6カ月の終値平均とほぼ同水準で、買収価格は約2兆円となる。

だが、東芝が22日に物言う株主を含む複数の大株主と面談した際、買収価格が十分と評価した株主はいなかったという。買収提案受け入れを表明した23日の文書でも、取締役会は賛同したものの、買い取り価格が「現時点で推奨できる水準に達していない」として株主にはTOBへの応募の推奨はしないと付言した。

JIP側はTOBに応募する株式が66・7%の所有割合に満たなければ買い付けを行わない方針。物言う株主は東芝株の30%弱を握るが、株式が非上場化すれば影響力が排除されるため買い付けに前向きに応じない可能性があり、その動向がTOB成立の成否のカギを握る。

東洋証券の安田秀樹シニアアナリストはTOB価格について、東芝が令和5年3月期の連結業績予想を下方修正したことを踏まえ、「それほど違和感のない妥当な価格」と指摘。だが、「売却価格が妥当かは株主によって認識が違う。実際にTOBをやってみないと分からない」と分析した