薬の安定供給への影響懸念も 沢井製薬の検査不正

薬の安定供給への影響懸念も 沢井製薬の検査不正

ジェネリック医薬品(後発薬)の深刻な供給不足が続く中、再び、後発薬メーカーによる不正が明らかになった。業界最大手、沢井製薬では長年、承認を受けた手順と異なる方法で品質確認検査が行われていた。国内後発薬市場でトップシェアを争う沢井製薬の不正は業界に衝撃を与えている。

沢井製薬は23日、九州工場(福岡県飯塚市)でつくっていた胃潰瘍や急性胃炎の治療薬、「テプレノンカプセル50ミリグラム(サワイ)」にかかわる安全性確認を巡り、不正があったと発表した。

平成22年に行った社内の試験で、有効期限の3年を1年超えている長期保存していたカプセルを使った場合、薬の成分の溶出が低下していることが分かった。その後、27年以降、保存3年目のカプセルから内容物を取り出して別の新しいカプセルに詰め替えて試験を行うという、承認を受けた手順と異なる方法で試験を進めた。同社は「有効性や安全性に大きな影響を与える可能性は低い」としている。

当局による業務停止命令などの判断はまだ行われておらず、同社の生産体制や、後発薬全体の安定供給への影響については未知数だ。同日、会見を開いた木村元彦社長は「行政当局の判断を待っている。既存品の出荷に影響を及ぼさないように対応する」と答えるにとどめた。

ただ、現在、国内で起きている後発薬の供給不足は令和2年以降相次いで発覚した後発薬メーカーによる製造工程や品質管理の不正に端を発している。小林化工(福井県)では2年12月、爪水虫などの治療薬に睡眠導入剤が混入したことによる健康被害が明らかになった。3年3月には当時、業界最大手だった日医工(富山市)が、承認されていない工程で製造した医薬品を出荷するなど品質管理上の問題を指摘され、富山県から業務停止命令を受け、製品を自主回収した。こういった不祥事の積み重なりが今も続く供給不足につながった。

「日医工の不正の後、業界のリーディングカンパニーになった沢井製薬での不正。いよいよ安定供給が危なくなるのでは」。製薬業界関係者はこう不安をあらわにした。

この十数年、政府は医療費の抑制につなげようと後発薬の普及を促し、4年度の出荷ベースでの調査によると、後発薬の数量シェアは約8割を占めるようになっている。その中で、後発薬業界には、需要の急拡大にメーカー側の体制整備が追いつかない状態が続いていた。

その中で、沢井製薬は業界のリーディングカンパニーとしての責務を自覚し、率先して法令順守の意識を高めなければならない立場だった。今回は、会社側が4月に不正を把握しながら、公表が10月になったという、対応の遅れも指摘されている。安全性の高い薬の安定供給のためにも信頼回復が急がれる。