保育園・幼稚園で広がる夕食販売 「へとへと…」共働き家庭をサポート、地元企業の新たな商機

保育園・幼稚園で広がる夕食販売 「へとへと…」共働き家庭をサポート、地元企業の新たな商機

北九州市の幼稚園、週2日「おたすけご飯」

幼稚園や保育園で、保護者に夕食用の総菜や弁当を販売する取り組みがじわり広がっている。親にとって、仕事後の限られた時間で子どもを迎えに行き、買い物や夕食作りまでをこなすのは一苦労。夫婦共働きが当たり前となる中、夕食販売には「心にゆとりを持って子育てできるよう支えたい」という園側の思いがある。

北九州市門司区のさいわい幼稚園は毎週火、木曜に「おたすけご飯」を実施している。園の調理室を使って「春巻きとひじき煮」など、主食と副菜のセットを準備。迎えに来た保護者は家族の人数に合わせてSサイズ(1、2人前・500円)から購入できる。

 同園の桐原昌子主任によると、午後7時までの預かり保育の利用が増え、保護者から「夕食を作る時間がない」「子どもの面倒を見ながら料理を作っていると、へとへとになる」との悩みが寄せられるように。「実家のようなサポートができれば」と5年前に始めた。添加物をできるだけ使わず、煮込みハンバーグなど家庭で作ると手間のかかる子どもに人気のメニューを心がけているという。

 同様に手作り総菜などを夕食向けに販売している福岡市城南区の保育園「アンジュブラン中村学園前」は、「より多くの働く親の役に立てれば」との考えから、園の保護者だけでなく、地域住民も購入できるようにしている。

 国の労働力調査によると、サラリーマン世帯に占める共働きの割合は、1980年は約35%だったが、2024年は約72%まで増加。ベネッセ教育総合研究所の22年の調査では、子どもが保育施設で過ごす時間は約30年前より1時間半ほど長くなった一方、夕食のピーク時間は午後6~7時と変わっていない。慌ただしく夕食の準備に追われる親の姿が浮かぶ。

 大阪教育大の小崎恭弘教授(保育学)は、女性も男性と同様の働き方や責任が求められる時代となり、夫婦共に家事育児の時間を十分確保するのが難しくなっていると指摘。「夕食だけでなく、子どもの朝食や入浴など、これまで家でやってきたことも保育施設がサポートする動きが広がっている」と話す。

 保護者のニーズに応えることは、地元の店や企業にとって新たな商機にもつながっている。

 北九州市八幡西区の聖ヨゼフ幼稚園は4月から、近くの弁当店「シェリデリキッチン」と連携し、毎週木曜に夕食用の弁当提供を始めた。園が注文受け付けから販売まで代行する仕組みで、「パパやママの助けになりたいという思いが実現でき、うれしい」と同店。おかずは7、8種類と豊富で、無農薬野菜など食材にもこだわる。保護者の男性(49)は「夕食準備を省けるので、お迎え後にゆとりができる。毎週親子で楽しみにしている」と喜ぶ。

 東京都内の認可保育所など約30カ所で、保護者向けに総菜を提供する料理のテイクアウト販売会社「マチルダ」(東京)は「子育てしやすい社会になるよう取り組みを広げていきたい」としている。(壇知里)